デヴィッド・R・ホーキンズ著「パワーか、フォースか」の意識レベル理論を実生活で活かす方法をお伝えしています

「人に迷惑をかけない」より大切なこと

「人に迷惑をかけない」より大切なこと

 
児童相談所の一時保護所で誕生日を迎える子どもがいます。
一時保護所とは、虐待や非行、その他の理由で家庭で生活できない子どもを一時的に預かる場所です。基本的には集団生活で、外出も自由にできません。(通学も原則としてできません)
一時保護所にいると、誰にも祝われることなく誕生日が終わってしまいます。

どんなに悪さを繰り返す非行児さんも、虐待を受けた子も、自分の誕生日はとても気にします。
誕生日に親御さんが面会に来てくれる子はまだいいですが、まるっきり音沙汰なしという家庭もたくさんあります。
僕はどんな子でも誕生日だけは大切にすると決めていたので、担当していた子の誕生日には必ず顔を見にいくようにしていました。

その年の誕生日がたまたま日曜日だった非行児さんがいました。
誕生日の数日前に、僕は、誕生日の当日に会いにくるとその子に約束しました。

「えー、でも日曜日やん。出口さん大変やない?」
そんな気遣いの言葉をかけてくれました。

非行と名のつく問題行動は全てやり尽くし、親も学校も地域もお手上げだった子です。
そんな子の口から僕を気遣う言葉をかけてもらった僕は思わず
「◯◯ちゃんって、優しいんやね」とぽろっと口にしました。

するとその子は、「えーーーーっ、なん、マジで。もう、照れる〜!!!!!」とめちゃくちゃ照れ出したのです。

僕が何気なくかけた言葉が、その子には特別な意味を持っていました。
十数年間の人生の中で、こんなちょっとした褒め言葉ですら、彼女はかけてもらったことがなかったのです。
この彼女のリアクションに、僕もまたショックを受けていました。

問題行動を起こす子ども達は、「人に迷惑をかけるな」「被害者の気持ちを考えろ」と散々言われ続けています。
しかし、自分自身が大切に慈しまれた体験がなく、自分で自分のことを大切にできない子が、他人のことを大切にできるわけがありません。

僕は非行児さんには、いつもこう伝えます。
「子どものうちは、親や児童相談所に迷惑をかけていい。どんどんかけなさい。君が今、学ばないといけないことは、自分自身を大切にすることです。その本当の意味がわかったら、もう僕のところには来なくていいですよ」

自分を愛すること、大切にすること、認めること。
大人でさえ(大人だからこそ)難しく感じてしまう人も少なくないですが、すべての出発点はここにあります。