デヴィッド・R・ホーキンズ著「パワーか、フォースか」の意識レベル理論を実生活で活かす方法をお伝えしています

相手の人生全体に想いを込める〜人間関係の悩みを軽くして意識レベルを高めるヒント

今日は、職場の上司部下家族、パートナー、友人などあらゆる人間関係の悩みから軽やかになり、自分をエンパワーメントするための思考法についてお伝えします。

 

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僕が児童相談所で働いていた頃に3年間担当していた非行のお子さんがいました。

 

問題を起こして保護されるたびに「もうやらない」と泣いて詫びるのですが、何度も同じことを繰り返します。

 

僕は担当者として厳しく指導しなければならない場面もありましたが、その子の問題行動は困難な環境を生きぬく術であることもわかっていました。非行から立ち直らせるためには、まずは僕自身がその子にとって安心して信頼してもらえる大人でいよう、それを一番大切に思っていました。

 

3年の間、家出するたびに探し回ったり、手紙をやりとりしたり、一緒にジグソーパズルをしたり。

 

そして何度も面接をして話し合い、いろいろなことがありましたが少しずつ成長し、次第に行動も落ち着いてきました。

 

「あの時は大変やったよ」
「迷惑をかけてごめん」
と、振り返って笑い話ができるぐらいになっていました。

 

ある時、進路が決まったとのことで報告をしたいと、その子が相談所まで会いに来てくれました。

 

一緒にとても喜びました。

 

顔つきも考えもちゃんと大人に近づいて頼もしさを感じ、そんな姿を見れて僕は心から嬉しかったです。

 

楽しくおしゃべりをしたあと、その子が帰り際にこんなことを言いました。

 

「財布を落としたから、帰りの電車賃がない」

 

不自然な表情やしぐさを見て、嘘だと思いました。

 

その時は悲しい気持ちと少しの怒りもわきました。

 

でも今ここで僕に対して嘘をつくようだったら、この場で問いただして叱ったとして、また別の人に同じことを繰り返すだろう。

 

迷いましたが、僕は黙って千円札を1枚渡しました。

 

財布を落としたというのが嘘なのか本当なのかはわからないけど、もしもそれが嘘だったとしたら「君のことを大切に思っていた人を裏切った」ことに、いつか痛みを感じる人になってくれますように。

 

その痛みが、これからの人生で出会う人たちと関係を築く時にその子を支えてくれますようにと、想いを込めて「頑張らないけんよ」と言葉をかけ、見送りました。

 

相手の人生全体に想いをこめる

僕たちはふだんの人間関係において多くの場合、「相手と自分」という2者の関係にフォーカスしています。

 

ですが人間関係がうまくいかないと感じる時、この「相手と自分」の関係にフォーカスして、そこで生まれた感情にとらわれてしまうことが自分を苦しくさせてしまいます。

 

そんな時にはズームアウトする(俯瞰して視界を広げる)ことで、自分自身が楽になったり、新たな視点を得ることができます。

 

広い範囲を見渡すためには高い場所に登る必要があるように、ズームアウトすると自然に意識レベルも高まっていきます。

 

先ほどの僕のケースで言うと、自分とその子の関係だけにフォーカスすると
「裏切られた」
「悲しい」
「腹がたつ」
という想いや感情でいっぱいになってしまっていたかもしれません。

 

このような時に
「相手の人生全体」
「相手がこれから築いていく人間関係」
にまで視界を広げ、想いや願いを込めてみるのです。

 

すると自分自身に対するこだわりがふっと軽くなり、自分を苦しくさせる感情や想いと適切に距離を取ることができるようになります。

 

あのとき僕が選んだ行動が正しかったのかどうか、そもそも嘘だったのかどうかすら確かめることはもうできません。

 

でも、その子の人生全体に想いをこめることで少なくとも僕自身は救われたのです。

 

この【ズームアウト思考】は、職場の上司部下家族、パートナー、友人などあらゆる人間関係の場面で用いることができます。

 

「裏切られた」
「傷つけられた」
「大切にしてもらえなかった」
「わかってもらえなかった」

そう感じた時ほど相手の人生全体に視界を広げ、願いや想いを込めてみてください。

 

潜在意識には、自他の区別はありません。

 

相手に向けた広く・長期的な視点でのポジティブな想いは、自分自身を癒し力を与えてくれます。