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利他主義は最も合理的で自己中心的な行動である

人間関係やビジネス(仕事)がうまくいかない人の共通点のひとつに「自分のことばかり考えている」ということがあります。

 

例えば「プレゼンやスピーチが苦手」という人も、「自分のことばかり考えている」ことがその苦手意識の原因であることが珍しくありません。

 

「プレゼンやスピーチの目的は何か?」
「そのために、相手に何を伝えたいのか?」
よりも「自分がどう見られるか?」に意識の矢印が向くとき、「プレゼンやスピーチが苦手」という想いが生まれたりするのですね。

 

「自分のことばかり考えている」というと、一見わがままで周囲から疎まれるジャイアンみたいな人を想像するかもしれませんが、必ずしもそうではないのです。

 

「人に嫌われたくない」「人に責められたくない」「人にダメな人と思われたくない」「自分を守りたい」という想いから動く人はむしろ「良い人」という他者評を得ていることも少なくありませんが、自分のことばかり考えている人と言えます。

 

そして人は自分のことばかり考える時、己のパワーを自ら下げてしまうのです。

 

自分のことだけを考えれば、たとえどんな小さな問題でも耐え難く感じてしまうはずです
(ダライ・ラマ14世)

 

なぜなら自分のことばかり考えて自分にフォーカスしすぎることは、自分と他者の境界を深めることでもあるからです(自分の一部である「エゴ」に力を与えるということでもあります)。

 

自分と他者の境界が深まると、人は無意識に他者や世界と戦うようになります。そして現実的にも他者と対立したり、攻撃されたり、奪われる(手に入らない)恐れ、比較による劣等感に悩むことも多くなります。

 

ちなみによく「まず自分を満たすことが大事だ」と言われたりしますよね。この「自分を満たすこと」と、自分のことばかり考える(自分を守ろうとする、自分の取り分を奪われないようにする)ことは混同されやすいのですが、まったく似て非なるものです。

 

自分を満たすためには「自分を大切に扱うこと」が大前提ですが、同時に、「自分に向いている意識のフォーカスをゆるめていくこと」が重要になってきます。

 

では、自分に向いている意識のフォーカスをゆるめるにはどうすればいいのか?というと、その答えは「私を広げる」ことです。「私が広がる」と意識レベルも高まり、発揮されるパワーも拡大していきます。

 

渋沢栄一が「論語と算盤」で言っているのは、
長期で見れば算盤だけで暴走するやつは欲がない。本当に大欲があるやつは道徳的になる、ということだ
(楠木建氏/経営学者)

 

利他主義は最も合理的で自己中心的な行動である
(ジャック・アタリ氏/経済学者、政治顧問)

 

「私を広げる」ために意識すること

では、「私を広げる」ためには具体的にどのようなことを実践すればよいのでしょうか。

 

その答えは自分以外の誰か(自然や動物も含めて)を思いやったり、誰かのために行動を起こすこと。この時に自分の意識を100%、相手に向けてそれを行うこと、その機会を日常生活の中で数多く持っていくことです。

 

これはけして特別なことではなく、あなたもすでに経験したことがあるはずです。

 

例えば、

  • 自分の損得抜きで誰かの力になりたい、誰かに笑顔になってほしいと思うとき
  • 誰かが誰かに優しくしていたり、誰かが頑張っているのを見て、自分も嬉しくなったり勇気づけられたように感じるとき
  • 誰かの悲しい話を耳にしたとき、テレビなどで悲しいニュースを見た時に、自分のことのように胸を痛めているとき

 

このような時、あなたの意識は100%相手に向いており、相手を思いやっています。この状態を日常生活の中で意識的に創り出していくこと、その想いと一致する行動を取っていくことで、意識レベルを高め自らのパワーを高めていくことができます。

 

この時の「想いと一致する行動」とは、大きなこと(に見えること)でなくてもかまいません。コンビニでお釣りを被災地の復興のために募金するとか、レジ袋を断るとか、そのようなことから始めてみましょう。

 

ここでのポイントは、その行動の先に誰かの喜びがあることに意識を向けることです。これを丁寧に確認し続けていく、その積み重ねによって「私の広がり」とパワーの拡大を示す証拠が現実的に現れてきます。

 

ちなみに先ほど言葉を引用したダライ・ラマの協力のもと、スタンフォード大学では「思いやりと利他精神研究教育センター」という機関が設立されています。「思いやり」「利他」の持つパワーが科学的に解明されることで、僕たちの可能性はさらに広がっていくのかもしれません。