相手の想いも自分の想いも等しく尊重し、伝え合い、わかりあうアサーティブコミュニケーションであなたの問題解決をサポートします

「コロナ」と言うのをやめたら業績回復~日本電産永守会長の【ピンチをチャンスに変える思考法】

「コロナの影響による経済変化に、すぐれたリーダーはどのように対応しようとしているのか?」

 

今回は日本電産(株)の永守重信会長の言葉から、その思考パターンを読み解いていきたいと思います。

 

関連記事:「星野リゾート社長の【修正力】〜コロナ苦境にすぐれたリーダーはどのように対応しようとしているのか?」

 

永守会長は、1代で売上高1兆5000億円、従業員12万人の世界的企業を築いたカリスマ経営者です。オイルショックのあった1973年に創業し、以降バブル崩壊(1991)、リーマンショック(2008)などのピンチをことごとくチャンスに変え事業を拡大してきました。

 

そんな永守会長は、今の“コロナショック”にどのように向き合おうとしているのでしょうか?

 

「コロナ」と言うのをやめたら業績が回復

永守会長は、コロナの社内に対する影響について次のようなエピソードを語っています。

 

「社員に何かうまくいかない理由を聞くと“コロナ”という。でも2月から4ヶ月間もコロナと言ってきたからもうそれは十分に聞いたし、もう言い飽きただろう?と。だから『6月1日からはコロナのコも言うな』と言っていた。そしたら業績が回復した」

 

事業を行ううえで、コロナの影響を現実的に直視することはもちろん必要なことでしょう。でも「コロナのせいでうまくいかない」と[受け身思考]の言葉を口にすれば、そこで人は思考停止してしまいます。意識的にも無意識的にも「うまくいかなくても仕方ない」「自分には何もできない」という言い訳や無力感が芽生え、クリエイティブな思考が働かなくなってしまうのです。

 

それに対し、「コロナ」と口にするのを止めることで「今、自分にできること」を考え、取り組もうとする[主体的思考]が芽生えます。それが結果として、日本電産の業績回復をもたらしたと考えることができます。

 

コロナに限りませんが、状況に対して受け身でいることをやめ、主体的に思考し行動することは、現実的に強力なインパクトをもたらすものなのです。

 

永守会長の口癖は「ピンチはチャンス」。この「ピンチはチャンス」という言葉自体は目新しいものではありませんが、実際にピンチをチャンスに変えられる人は少数派かもしれません。

 

ピンチをチャンスに変えられる人、変えられない人。この両者を分けるものが[主体的思考]です。ピンチに対して受け身でいるかぎり、どんなに「ピンチはチャンス」とおまじないのように唱えても、ピンチはピンチのままなのです。

 

永守会長は、次のようにも話しています。

 

「風がなくても凧をあげる。凧をもって経営者は走らないといけない。そうしたら風を自分で起こせる」

 

“困難さん”にぶつかれば、困難さん自身が内ポケットに解決策を持ってくる

日本電産でも今回、コロナの感染拡大防止のためテレワークが導入されました。永守会長ははじめ、テレワークと言いつつ実質は休暇みたいなものだと考えていたそうです。家で何をやってるかわからないし評価のしようがないと。

 

ところが蓋を開けてみると、コロナが起きる前より受注を増やしている社員もいる。通勤がなくなったおかげで時間に余裕ができ、電話営業がどんどんできるようになったからだそうです。永守会長はこの話を聞いて非常に驚き、考えがまったく変わってしまったと言います。コロナの感染拡大が起こらなかったら、こんな目から鱗みたいなことは全然考えなかったと。まさに「ピンチの裏に隠れたチャンス」が発見できた瞬間でした。

 

永守会長は、このようにも語っています。

 

「困難は悪い点ばかりではない。困難さんが追いかけてきたら逃げてはいけない。ぶつかれば困難さん自身が内ポケットに解決策を持ってくる」

 

「人が学ぶのは全部悪いときであり、会社が一番伸びるのは不景気のとき。不景気の時はもっとも日頃の努力の差がつく。だから、むしろ不景気がくるのを待たないといけない」

 

これらの言葉に共通するのは、[高い意識レベルの視点]です。それは「すべてのものごとにはポジティブとネガティブ、両方の側面がある」というものの見方です。これに近いものに[陽転思考]という考え方があります。この陽転思考や高い意識レベルの視点は、長期的に成功している経営者はほぼ必ずと言っていいほど持っているものです。

 

困難にも悪い面ばかりではない。困難にぶつかる(主体的に取り組む)ことで解決策を見つけることができたり、人は学び、成長できるというポジティブな側面がある。だからこそ、永守会長は感謝と親しみをこめて“困難さん”と呼ぶのでしょう。

 

今、コロナの影響で困難に直面している方はぜひ、これらの[主体的思考][高い意識レベルの視点(陽転思考)]を使ってご自身の状況をとらえ直してみていただければと思います。すると今まで感じられなかった力が湧いてきたり、思いがけないチャンスをつかむ活路を見出せるかもしれません。