デヴィッド・R・ホーキンズ著「パワーか、フォースか」の意識レベル理論を実生活で活かす方法をお伝えしています

自分を偽ることをやめると、人生が動きだす

昨日、10年ぶりにパスポートの更新手続きに行ってきました。

 
僕は今は男性として生きていますが、前回パスポートを作ったのはまだ女性として生活していたとき(いわゆるトランスジェンダーです)。その時の写真と見比べると、僕もまあまあオッサンになったな〜としみじみ思います。

 
僕は36歳の時に当時勤めていた市役所を退職しました。そして同時に家庭裁判所で名前を変え、横浜の小さなクリニックで手術を受け、晴れて男性としての人生を歩み始めました。

 
それまでの人間関係をすべてリセットし、自分の過去を知る人のいない世界でやっと、自分らしく生きられる。

 
と、思っていたけど・・・

 
そうはなりませんでした。

 
男性としての名前と身体を手にいれた後に待っていたのは、新しく築いていく人間関係の中で、自分の正体や過去が知られることを恐れる日々でした。

 
ひとつの嘘をつくためにさらに嘘を重ね、嘘を守るためにエネルギーを使う。

 
そんな毎日に僕は疲れていきました。

 
そんな生活が2年ほど続いた頃、ある”事件”が起こります。

 
その日、僕は当時お世話になっていた松尾昭仁さんという経営者の方が主催する飲み会に参加していました。

 
松尾さんはご実家が九州という共通点もあり、フラフラ生きていた僕をいつも気にかけてくださっていました。

 
その飲み会の途中、僕は松尾さんの隣に呼ばれました。

 
なにかな?と思って松尾さんの隣に座ると、松尾さんは開口一番、

「お前はなんで結婚しないんだ」

と聞いてきたのです。

 
この手の質問はいつも適当に、のらりくらりとかわしていたのですが、僕は、松尾さんにはもうこれ以上嘘をつきたくないと思い始めていました。

 
もしかしたら松尾さんはとっくの昔に僕の正体に気づいていて、カミングアウトさせるためにこの話題を持ち出したのかも?という都合のよい期待もよぎりました。

 
打ち明けるなら今しかない。

 
僕はそう思って、勇気を出して言いました。

 
「僕はもともと生まれた時は女性だったんです。今は名前と身体は変えましたが、戸籍の性別はまだ変えてなくて。だから結婚はできないのです」

 
男性としての人生を歩みだしてから、初めてのカミングアウトでした。

 
それを聞いた松尾さんの反応は・・・

 
「えええー!そうなの!!?」

 
あまりにも松尾さんが大声でびっくりしたもんだから、その席にいた30人ぐらいが一斉にこちらをふり返ります。

 
2年間、ひた隠しにしていたことを言ってしまった。

 
ここにいるみんなにも知られてしまって、もうこのコミュニティにはいられないかもしれない。

 
「まずかった・・・」

 
僕の中にじんわりと後悔の想いが広がりそうになった瞬間、松尾さんはこう言いました。

 
「なんでそれ早く言わなかったんだよ。起業家にとって、マイノリティであることはオイシイんだよ!」

 
思ってもみなかった松尾さんのこの言葉は、僕にとって衝撃でした。

 
過去にも、親しい友人や役所をやめるときの上司には自分のセクシュアリティを打ち明けたことがありましたが、みな、深刻な顔をして

「つらかったでしょう」
「打ち明けてくれて、ありがとう」

と慰めてくれました。

 
そういった反応ももちろん本当に、とてもありがたかったのですが、松尾さんは「オイシイ」というきわめて軽い言葉で、僕の人生に重くのしかかっていた苦しみをふりはらってくれたのでした。

 
「そうか、自分って、おいしいのか」

ストンと腑に落ちて、なんかちょっと笑えてすらきました。

 
すると、それを聞いていたほかの人たちも

「僕も実は、色盲があってね」

「僕の家族には、こういう悩みがあってね」

そうやって次々に自分の悩みを打ち明けてくれました。

 
世界はやさしいんだな。

 
その世界に対して閉ざしていたのは、自分だったんだな。

 
その時にはじめて気がつきました。

 
僕の人生は、この衝撃の事件から少しずつ変わっていきました。

 
僕は自分のセクシュアリティを隠そうとすることはなくなり、積極的にアピールすることはなくても、タイミングがあれば自ら話題にするようにもなりました。

 
自分を偽ることをやめると、それだけで人生は驚くほど心地よく生きやすくなりました。

 
松尾さんのように、僕の生き方を面白がってプラスにとらえてくれる人がけして少なくないことも驚きでした。

 
自分が否定していた自分自身を打ち明け軽やかに受けとめてもらう体験が、これほどまでに人に力を与えるのだということを身をもって知りました。

 
そして今では、僕がこういう人間だからこそ相談したいと思った、と言ってくださるクライアントさんもいます。

 
本人にとっては重大で恥ずかしくて誰にも言いたくないことでも、他人から見たらなんてことなくて、むしろそれが魅力や長所に変わることはよくあることなのです。

 

私には3つの財産がある。

それは学校へ行かなかったこと、健康に優れなかったこと、決断に弱かったことだ。

だから、人が教えてくれたり、助けてくれたりして成功した

(松下幸之助)

 
もしもあなたが他人に対して隠していたり、偽っている自分がいるなら、それを思いきって打ちあけてみることが人生を変えるきっかけになるかもしれません。